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レポート2020.01.06 Facebook Twitter

小樽展に込められたコンセプトとビジョンが語られたプレトーク「メディア芸術からはじまる小樽の可能性」

文化庁メディア芸術祭小樽展は、歴史ある小樽を表象する中心市街地のさまざまな建物を会場としたはじめての大規模な先端的なアートプロジェクトとして開催します。
開催に先立ち、本展をつくる人々と、小樽の歴史と文化を担う人々によるダイアログが行われました。市立小樽図書館を会場に、市内からさまざまな人が集まり満員となった、その模様をお伝えします。(2019年11月12日実施)

文化庁メディア芸術祭小樽展 開催を通じた小樽の可能性

伊藤博之 クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 代表取締役

伊藤博之
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社
代表取締役

(伊藤)札幌で事業を行っている企業として、北海道にまだまだ可能性を感じています。もっとできることがたくさんあるし、上手く進められていないこともあり、住んでいる我々自身が北海道について過小評価している部分があると思うので、価値があるということを我々自身が知り、それを活用して更に価値を引き出していく必要があると日々感じています。

小樽のポテンシャルにも感じるところがあり、メディア芸術祭の地方展を小樽で開催してはどうかという検討を重ね、文化庁に申請を出し、今回メディア芸術祭小樽展として採用が決まりました。
会社として地域貢献、振興を半分仕事、半分ボランティアのような形でやり出したところでもあり、メディア芸術祭小樽展も小樽の皆さんと一緒に楽しんでいきたいと思っています。
芸術祭を行うインパクトは、それを通じてお子さんを含めて芸術に触れる機会を持っていただく市民を増やしていく。創る、考える、工夫する。まちを使ってまちに相応しいアイデンティティを持っていく、維持していく、発展させていくというためのものです。
クリエイティブなコミュニティ以外のものを造成させていけたら、会期が終わっても先に繋がっていくと思いますので、そのような取り組みを地元の方たちと行っていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

小樽展のテーマ「メディアナラティブ」

(岡田)文化庁メディア芸術祭というのは、日本の文化芸術基本法の中にも記載されているメディア芸術の振興のため、1997(平成9)年より毎年行っているものです。国が定めるメディア芸術という分野(アート、エンターテイメント、アニメーション、マンガ)の4部門の作品を世界中から公募しています。審査によって表彰されたその年度の優秀作品を毎年東京にて展示しています。
それを各地域でも楽しんでいただこうということで地方展が開催されています。
地方展は、その優秀なメディア芸術を全国各地域で接することができるように企画されているものです。
毎年開催地の企画公募がなされ、地域に合った展覧会企画を求められます。今回は札幌に本社のあるクリプトン・フューチャー・メディアが提案を行い文化庁の採択により小樽で開催することになりました。

岡田智博 文化庁メディア芸術祭小樽展 ディレクター

岡田智博
文化庁メディア芸術祭小樽展 ディレクター

テーマに掲げた「メディアナラティブ」、それは何でしょうと思われる方もいるかもしれません。
小樽は市民の皆さんがご存じのように、文学、映画、漫画でも小樽出身者によって形になったり、または小樽を舞台にしたものが生まれています。
人々が日々紡いでいくもの、人々の会話や重なり合いによる生まれてくる物語、小さな物語が広がっていくような形をナラティブといいます。
メディアの世界でも今、ナラティブというキーワードが重要になっています。アプリやソフトウエア、ITサービスを活用する、そこにその人たちの物語を乗せられるものがサービスという形になっています。
小樽でメディア芸術に接することで対話が生まれ、新しい物語ができる、風景ができるということがあればいいなということから「メディアナラティブ」というテーマを今回掲げさせていただきました。
小樽らしくて、人々が文化とともに息づく場所を会場に、それらをめぐる展示や体験を行っていきたいと思っています。
そこに偶然訪れるインバウンドの方々にもいい思い出となり、一層小樽の価値を高める魅力となるよう考えています。
市民の方にはいつもの場所にいつもと違う景色というものを作品を通じて感じていただき、新しく何かできる可能性を考えていただくきっかけになるではないかと期待しています。

会場や作品など

  • 運河プラザ3番庫
    インバウンド含め、観光客の方々が偶然立ち寄り、驚いてもらえるような展示にします
  • 産業会館
    古くからある建物で、市民が歩いていて見かけながら、立ち寄ることが少なくなり、もう少し華やいでほしいと思っているとかもしれません。こちらは我々としてもチャレンジのスペースとなります。
  • 市立小樽文学館
    文学館の中で漫画が読めるようにしたいと思っています。
  • 小樽市民センターマリンホール
    上映会で映画をお見せしたいと思っています。
  • 近森基さんの「KAGE-table」(産業会館)
    第1回文化庁メディア芸術祭大賞作品です。
    子どもたちが作品に群がっていました。メディアというと最先端でとっつきにくいと思うかもしれませんが、ちょっとした不思議なこと、面白いことが込められています。テクノロジーが25年経って進化しているので、同じものでも中身がどんどん変わっています。影をタッチすると影ではなくて鳥がでてきたり、様々な影がインタラクティブに出てくるという楽しい作品です。
  • 児玉幸子さん(三番庫)
    「突き出す、流れる」という作品で第5回メディア芸術祭の大賞を受賞されました。 磁気含む液体を変幻自在に操作することによって映画のターミネーターみたいに、彫刻ができる。そのような作品を創られています。児玉さん自身は大学を北大で過ごされたということもあり、北海道に愛着の深い方です。複数の不思議な世界の児玉さんの作品を皆さんに触れていく会場が産業会館であったりすると、こういった感じのものがここでできるんだという風に皆さんにも見て頂けると思います。そういう会場によっての面白さを考えていきたいと思っています。
  • 水口哲也さん(産業会館)
    「Rez Infinite」世界観がゲームからVRまで幅広い世界なので、どのように見せていくかということを考えていきます。
  • チームラボ(三番庫)
    テクノロジー集団と呼ばれています。コンピューターサイエンティストや、若手の日本画家、更にはミュージックコンポーザーなどが集って会社としてチームを組んでいます。

「100年海図鑑 アニメーションのジオラマ」は100年分の映像が出てきます。100年分の映像が詰まっているわけでなくコンピューターが大和絵の海の中、山、島、波打ちの姿、100年分を電子計算機ででてくる動く大和絵の世界を展開していきます。
チームラボは今、世界的にも注目されています。上海では1万m2、チームラボだけの美術館ができてます。佐賀県では山にあった昔の大名の庭園、丸々一山で作品を展開しています。山を独自のライティングで光らせたり、滝を創ったりというチームラボの世界です。

これがあることにより、今まで誰も行かなかった大名の山の庭園に、東アジア全体からこれを見るために佐賀にやってくるということ起ってきています。このようにデジタルアート、メディアアートと呼ばれる物自体、わかりにくいというものではなく、場というものを変える力を持っている。
その変わった場を見に、もしくはその文化を見に人々が集っています。
そんな姿の入り口になるようなものを今回小樽展でも皆さんに見て頂ければと思っています。

そう言うと壮大に思えるかもしれませんが、予算の面もあり、「この程度?」と思うかもしれませんが、その程度のものでもちょっとしてものが変わっていきます。
それが変わっていくことで、もっと小樽の中にある色んなスキマを使っていける、変えて行けるんじゃないかなと思っていただければと思います。
例えば2年前、私が沖縄の石垣島で文化の島づくりということで、メディア芸術祭を石垣島で行いました。
その際、島の生活の中で日常的に使われていた小屋で展示を行った際に、ご高齢の公民館長さんが最先端の作品のデジタルの立ち上げのボタンを押したリ、作品説明を行ったりと、作品があることで変わっていくことがありました。
このようにこれまでの立体的な作品の展示を通じて、それぞれの会場が変わっていく。場がどんな形で映えるんだという方向が見えれば私たちにとっては素晴らしい経験になります。
また、このようなトークだったり、さきほどお話しした新しい形の創造的なまちづくりをしていく局面、ノウハウを持っている方々によるワークショップなどを行うことによって、小樽らしさ、良さというものを次に繋がるっかけとしてこの文化庁の制度を利用して皆さんに貢献できればと考えています。

福島慶介 建築家・デザイナー N合同会社 代表

福島慶介
建築家・デザイナー N合同会社代表

(福島)今回ロゴ作らせてただきました。実はこれはやらせてくださいと立候補しました。
小樽の代表としてシンボルを作らせていただくことでしっかり地元に橋渡し、イベントを成功させるためにという心意気でロゴデザインをやらせていただいたという形です。
ロゴは具体的に何かというと、小樽の方は八区八景ご存じだと思いますが、小樽は特徴的なエリアで八つの地区に分離されています。このロゴマークの惑星のような形は八区八景を分解したものです。八区八景を使った理由は今回、新しい世界がやってくるというのは、期待がもてるものなので新しい世界としてある種地球儀みたいなイメージでもありますが、それを引用しています。引用していますが、実はそれは元々小樽の図形を使ってやっていることで、これから新しく変わっていく世界はあるけども基本的にはこれまでの物語をこれからに紡いでいく、そういった位置づけを持たせたいなというところが大きな一つで、もう一つはまちづくりに色んな展開はありますけど、このまちでみんなが同じ方向向ける要素ってなんだというときに、東向きのまちなので朝陽がすごくきれいに力強く昇っていく。そのようなイメージも引用したいというところがあり、この球体、円に近いようなシルエットになりました。細かくは物語はナラティブ、紡いでいくものなので、それに合わせてグラフィック、島のようになっているものをつないでいくとか、文字の方でもつないでいくようなものをイメージしました。惑星に周りに飛んでいる小さな三角形は「ナラティブ」、物語を紡いでいくための細かな人々の記憶のようなものだと思っていてだいて良いと思います。

今後の抱負としては、これから観光都市から交流都市へという話は耳にしていると思いますが、じゃあ観光都市から交流都市へ変わる一つの形として、観光って光を観に行くって書きますけど、じゃあその光って何かと言うと、おそらく地域に住む人たちだなと思うんです。そうなるとまず市民が中心にいて、光り輝いてこのまちの中で楽しそうに過ごしている様子、そこに観光の人たちというのは興味がある、札幌の人たちもそうかもしれないですけど、離れたところの人たちがその光を見に一緒に集まってくる、それが本当に観光の本来でいいんでしょうし、まちを見に行くとなると市民が中心に光輝いている様子が作れたらと思っています。なので、今回のイベントは、特に全部の作品入場無料で見れるということもあったり、これからコンテンツが色々紹介されていきますが、すごく楽しみなイベントになります。これをきっかけに小樽のまちを見直していったり、価値を作っていたり、そういうきっかけに位置付ける以外に選択肢ないという風に思っていました。
文化がちゃんと経済と結びついていくようなことも今後色々できると思いますし、小樽の中で眠っている素材、そういうものをどんどん前に、このまちの価値を上げていく、そのために創造都市、クリエイティブシティと呼ばれているような取り組みを今後していきたいなという意味合いも込めたロゴマークです。
とはいえ、一人で出来る話ではないですし、皆さんと同じ方向を向けたらいいなと思っています。

シビックプライドという言葉を最近よく聞くかと思いますが、あれはまちに誇りを持つという結果論的な話で、本当に大事なのは、自分たちがまちに関わっていますよというところなんです。なので今後色んな場で出来ることあると思うんですけど、皆さんと色々やれると嬉しいなと思っております。

文化庁メディア芸術祭小樽展 エグゼクティブアドバイザーによるメディア芸術の可能性

(水口)54年前に小樽の市立病院で生まれ、2歳で小樽は離れましたが、父親が小樽商科大学に行っていたこともあり、小樽というのは常に自分の中で特別な存在です。 今、小樽に関わるということもとても感慨深いです。現在は6年前にアメリカでエンハンスという会社を起業しています。
メディア芸術とは何かと言いますと、技術と技術が組み合わさったものだという風に考えていただいて良いと思います。
テクノロジーを使った新しい表現、体験というものを今まで何千年と人間は創作してきました。
アートの中にはビジュアル的なものや、音楽、演劇、料理、文学など様々なものがあります。
例えば、100年前のアーティストでワシリー・カンディンスキーというバウハウスという芸術運動の中心的な方でした。彼のモスクワという有名な絵画があります。この絵は一日中モスクワを歩き続けて、朝から夕方まで得た音のインスピレーションをキャンバスに表現していたと言われています。その頃のアーティストたちが使っていたシナスタジアという言葉があります。共感覚という意味ですが、音のイメージからビジュアルを発想するとか、香りから色が連想されるとか、感覚が交差するような体験とか印象をどう表現するか。こういうものは特別な人の感性だと思われがちですが、そんなことはないと思うんです。皆さん、例えばある色を見たときになんとなく匂いを連想されたりですとか、例えばミントをなめたときに、実際に冷たいわけではないのに、冷たいって感じるとか、色んな共感覚性を皆さん持ち合わせているんです。この共感覚を増幅させて拡張させて表現したりとかいうことを昔のアーティストたちはたくさんやってきたと思います。
イタリアの未来派だったウンベルト・ボッチヨーニの絵でサッカープレイヤーというタイトルの絵、彼にはサッカープレイヤーの動きがこう見えていたと思うような作品です。
このような彼らが今、この時代に生きていて新しいテクノロジーを使ったときにどんな新しい表現ができるんだろうかとイメージされるといいと思うんです。100年前、200年前、1000年前のアーティストも多分頭の中でイメージしたものは我々と同じだと思うんです。

水口哲也 ゲームクリエイター・プロデューサー 文化庁メディア芸術祭小樽展 エグゼクティブアドバイザー

水口哲也
ゲームクリエイター・プロデューサー
文化庁メディア芸術祭小樽展 エグゼクティブアドバイザー

使えるテクノロジーが100年前は四角いキャンバスしかなかった。でも我々は今、とてもたくさんのテクノロジーや色々なものを持っていて、それを新しい表現とか体現とかに変えることができる。
手前みそな話ですが、自分のやっていることを通じて、その辺のお話をさせていただきたいと思います。child of edenというというげーう作品なんですが、ゲームというとコントローラーを持って遊ぶというイメージがあると思うんですが、コントローラーを一切使わないで、カメラに向かって手をかざしたリする、指揮者のようにプレイするという時代が7~8年前から始まったんです。
カメラの前に立っただけで、手や頭や足の先がどこかという3次元として捉える技術ができ、今は一般的な技術になり始めています。
その後2016年にRez Infiniteという作品を開発して世界に発売しました。これまで四角い画面で遊んでいたゲームがVRのヘッドセットをつけることによってフレームが無くなり、全部3次元になります。ということは、その世界に自分がいることになります。
ゲーム中の効果音がゲームの進行によって連続していくことによって、音楽化していき、音楽を演奏しているような気分になっていくのです。その音楽にも光や動きもつくと、3次元で音楽を見るという感覚になってくるんです。 さきほどのワシリー・カンディンスキーがもし生きていたらどういうことをやりたいのかをイメージしたときに、このゲームができあがりました。これを体験すると、これまでにない没入感と全く新しい体験、共感覚的な。そうすると皆さん「なんだこれは?」という言葉がでてきます。この強烈な体験、言葉はテクノロジーが無い時代には無かったものだと思います。
昔、誰もがやったことのあるテトリス。35年前に開発されたゲームです。これが例えばメディア芸術とかテクノロジーによって、新しい体験に生まれ変わるとするとどういうことをイメージできるでしょうか。例えば、テトリスをやって泣いたことがある人っていらっしゃいますか。いないですよね。じゃあテトリスをやって人が泣くという経験を創るっていうとどういうことができるでしょう。今のテクノロジーを使って、どうやったらそれができるかというところが実は、メディア芸術というかテクノロジーを使って新しい体験に変えるというその部分のマジックになると思うんですね。我々は実はこれを4年ぐらいかけて開発を続け、結局テトリスの一つ一つの消えていくアクションからどんどん今回のテーマでもあるストーリーとかナラティブに変わって、物語になっていく、自分の一つ一つの一挙一動が物語化して音楽化してどんどん風景が変わっていって、そこにストーリーが生まれて感動が生まれて、それをVRで立体でプレイして、その世界の中に自分がいて周りにパーティクルが音楽に合わせて飛んだりする体現をしたときに、どこまで感動を引き上げられるのだろうかということをやったわけです。現実には絶対に起こりえないような体験を3Dで体験することになるということです。ゲームは実はここまできているということです。もっとこの先進化が起こるはずです。
あとは共感覚ラボっていうのがあります。さきほどのRez Infiniteのために作ったシナスタジアスーツというものですが、これには26個の触覚デバイスがついています。今の触覚デバイスというのはものすごく進化していて、例えばドラムの触覚とかベースの触覚、ギターの触覚、人間の声の触覚とかなでるような触覚とか全部表現できます。例えば音楽を感じたときに下半身だけがベースではじかれて、肩にハイアットが交互にくるなど、触覚が体を流れるように、音楽に合わせ表現できるようになりました。
最後は、スーツではなく椅子の話で、44個の触覚を持った椅子を開発しました。
スピーカーが2個で44個の振動装置がついています。この振動装置っていうのがさっき言った色んな触覚を表現でき、更にパワフルなやつなんです。先日CNNが来て取材をしていただきました。
まだプロトタイプで2台しかないんですけど、この中にLEDと触覚が入っていて7分間の音楽のような体験ができます。音楽に合わせて触覚が動きますので、その7分間を体験した後に、皆さんの中に新しい感情が生まれるというタイプの、これもある意味メディアアート作品です。
テクノロジーによってアートの解釈とかアートの範囲がどんどん広がっていきますし、これからもっと色んな新しいテクノロジーに合わせて、色んな作家が登場したりとか、若い世代も色んな表現を始めると思います。先ほどのワシリー・カンディンスキーとか彼らがイメージしたシナスタジアっていうこの芸術的な発想がテクノロジーとともに新しい表現体系になってくると思います。
メディアアートは突然出てきたポッと出のものではなくて、脈々とつながってきたものをテクノロジーによって更にもっといいものにできないか別なものにできないかと考えているクリエイターたちの集合体として、このメディア芸術祭があるという風に考えていただけるといいんじゃないかなと思います。

文化庁メディア芸術祭で広がる文化のまちびらき

文化庁メディア芸術祭で広がる文化のまちびらき

駒木定正 小樽市文化財審議会委員長
玉木薫 市立小樽文学館館長

(駒木)文化庁がメディアで小樽に注目してくれたというのはありがたいことだと思います。伊藤さんがお話しになっている小樽、北海道はポテンシャルが高い、それを地元の人たちは過小評価している。小樽に関して僕もそうだなと思ってました。僕は建築の歴史の研究をしているんですが小樽にある銀行群、日本全国あのような場所はどこにもないんです。でも、小樽の人は普段見ているから、当たり前と思っています。ところがあれは東京にもないんです。東京は関東大震災、それから戦争で建物が壊滅的に一時無くなるんです。
たまたま日本銀行本店は関東大震災で残ったんです。何が残ったかというとレンガが残ったんです。内側の建物の空間は燃えてしまいました。だから建物は全部燃えてしまったんです。側だけが残ったのが今の日本銀行本店なんです。明治のときに日本銀行ができて全国各地の主要な場所にできるんですけど、現在まともに残っているのは京都と小樽しかないんです。
小樽は皆さん毎日見ているから当たり前に思うけど、それは実は当たり前ではなくて大変な財産を小樽が持っているということなんです。もっと自分たちのまちのいい所をちゃんと見て、日本そして世界の中で見ると小樽は文化庁が評価したポテンシャルの高いまちなんだということ、文化庁メディア芸術祭を今年度開催できるというのはすごいことだと思います。
それは外からそう見てくれたということの凄さだと思います。
水口さんがお話になっている技術と芸術、ワシリー・カンディンスキーの話をお聞きしてもそう思いましたが、アートがどんどん立体化していく、映像化していく、それが動く音に響いていくというそこのところは僕はすごく楽しみです。小樽の近代的になった建物の中に、機能としては止まっているが、銀行や商社の古い価値のある建物が技術によって新しい空間になって蘇えれそうだというところや、福島さんがロゴデザインに込められた八区八景。小樽のいいところはたくさんある、それを物語として、メディアナラティブとして組み立てていこうというところが楽しみです。
建築の歴史を研究している立場として、産業会館についてですが、よくぞここを選んでくれたと思いました。産業会館というのは実は電話局の付属としてできた建物なんです。
小樽の電話加入率を一気にあげた建物なんです。電話というのは音です。音の発信基地があの建物だったわけです。そして今回その建物の空間がメディア芸術という映像の発信としても使われる、テクノロジーによって電話の音から映像の空間に代わっていく。色々な可能性のある建物ということがイメージできました。本当に楽しみです。

(玉木)文学館は元々郵便貯金局の建物で、戦後の建てられたものですが、壁がないものすごく広い開放的な窓もある建物だったのですが、文学館、美術館として使用するために壁を作ったんです。それにより建物本来の命を壊したという形になりましたが、展示会の時に一部を元に戻すことができ、本来の魅力を味わえるようになりました。
今回、文学館も会場になるということで、その場所で漫画を読めるようになるということです。
大分前にマンガ雑誌の展覧会をやったときにも寝転んで読めるようなスペースを作って、マンガをめくる手触りや匂いを感じられるようにしました。そういうことがあって没入できる、それがあって行き来できるものかなと。
今回も文学館の壁を壊して素通しにしていくということを含め、インタラクティブというものを全身で感じ取れるような、先端のテクノロジーというのも興味はありますけど、そういうことを皆さんの新しい力でやってもらえるとしたら、すごくいいな、いい機会を貰えたなという風に思っています。

(岡田)メディア芸術という異物をまちの中にいれることによって新しい風景を創っていくという時代。こんな古い建物の中でこんなことするのはどうなんだと言われずに逆にそうしてもらいたいという風に言われるのは、企画を持ち込んだ我々にとったら良かったと思っています

(水口)世界では数百年の建物の中で最先端のゲームを作っているスタジオがあったり、そのような雰囲気の中だからこそ100年前、絵を書いていた人たちの頭の中と同じではないかと、同じような豊かな知的行為が場所として出てくるのではないかと思うんですが、その点、小樽についても古いものがあるというのは本当に財産だと思います。ヨーロッパでメディア芸術祭がよく行われるリッツというまちもそうですが、古いものと新しいデジタルテクノロジーの融合というものが一番美しいと思うんです。コントラストさえも美しい。外国の方も日本を訪れる方が増えてきて、インバウンドの方々の言っていることをつぶさに聞くと、最先端のテクノロジーのある日本とすごく古い建築物とか文化とか、そのコントラストが同居しているのが日本の魅力だという方が多いです。
その魅力を例えば京都は京都のやり方で、色々と努力されているし、東京も東京であると思うんですけど、そう考えると小樽というのは非常にいいキャンバス、素地がたくさんあります。台湾の高雄で、古い倉庫をアートミュージアムのように開放した瞬間、そこに人が殺到するとか。芸術とかアートは人を惹きつける磁力が常にどこのまちにもあると思うんです。パリの魅力は何というとやはりミュージアムとかアート、京都もそういう匂いがするし、小樽というのはそういう匂いを持ってる場所なので、それをうまくメディア芸術とかテクノロジーとかにのせて新しい体現とか表現が少しづつ少しづつ増えていくと魅力的なまちにどんどんなっていくんじゃないかという感じます。

(岡田)今、外国人のインバウンドから見たら一番最初に見に行くのが美術館だったり、アートセンターだったり、近代建築の中にそういうもの作ろうということになってきています。古いものやアートがあると人が集まってきます。高雄の場合は赤レンガ倉庫まちが4キロあってそれが何も使われていなかったいわゆるゼロの地点から10年で500万人くるようになりました。一人も観光客のいなかった場所に今では500万人来るようになったんです。そんなことが起こってきます。
小樽自体に皆さんが居たくなる、いいなって思う。そこに仕事が出てくる場合、両方にプラスになってくるかなと思います。
デジタルのコントラストということ自体は特別なことではなくて、今だから小樽を生かせるっていうことになるのかと思います。

共催、ホスト都市である小樽市より

(小山)今日は文化庁メディア芸術祭小樽展開催のプレトークということでご挨拶をさせていただきます。この文化庁のメディア芸術祭、来の1月11日から26日まで16日間開かれるということであります。さきほどごあいさついただいたクリプトン・フューチャー・メディアさんが小樽を選んでいただいて文化庁に提案をされ、それが採択をされたということで大変光栄に思っております。
今日のプレトークでは全く新しい視点からメディアと文化、そして小樽の可能性ということを皆さんでお話いただけるということで、ここにも大いに期待しているところでございます。
また小樽からは先ほども紹介のありました福島さん、歴史や文化に大変詳しい駒木先生、そして玉川文学館長にも参加いただけますので、このトークを通じて新しい小樽のまちづくりに対するきっかけやアイディアが浮かんでくるのではないかと大いに期待しているところでもあります。
今日はこのようにたくさんの皆さんにお集まりいただき大変感謝しています。
この文化庁メディア芸術祭小樽展を市民みんなで盛り上げていきたいと考えております。

共催、ホスト都市である小樽市より

左:小山秀昭 小樽市副市長